転車通勤の実践編であります。興味のある方は是非一度お試し下さい。気持ちいいっすよ。本当。太鼓判。内容は、これ股、本の中からの抜粋です。


リアディレイラーです

 快適な自転車通勤のために(99/10/01)

 当は自転車に乗って通勤することなど、何も難しいことはないし、少々偉そうなのが厭なのだけれど、まあ、パンクもしたし、転倒したりもしたし、一年間、それでも色々あったんで、自転車はこういうのが良いですよ、とか、こういうものを買っておくと便利ですよ、とか少しだけ書いてみます。
 興味があったら、やってみて下さい。週に一度だけでも、自転車通勤。きっと楽しいですよ。

 事場から自宅までの大まかな目安は、大体一五キロというところだ。これならば一時間前後で、必ず行き来できる。と同時に、これ以上になると、少しきつく感じてくると思う。
 まあ二〇キロでも全く無理とは言わない。この場合、二時間弱をみるとよい。問題なく自転車が進めば一時間半だ。
 たとえ一時間半であっても、満員電車で揺られているよりは随分楽に感じるかも知れない。だが、まあ二〇キロあたりが限界といえば限界だろう。
 しかし、例えば職場が新宿なのであれば、半径二〇キロには三鷹市、調布市、新座市どころか、府中市や稲城市、東久留米市あたりまでが含まれてくる。
 郊外だと、遠くなればなるほど電車のスピードには敵わなくなる。とはいえ、随分と遠くまで自転車の足は伸びるのだ。
 そして、駅から家までの距離がちゃらになる。
 駅から徒歩二〇分近く。マンションは多少安く買ったけれど、随分と駅から遠くになっちゃったなあ、というような人には特にメリットが多い。
 地図を読んで、実際に走って、周りをよく眺めてみると、自宅から職場の間には、色々な魅力的なものが発見できる筈だ。多少小さいけれど静かで整った公園とか、品揃えの優れた古本屋とか。
 意外な近道なども、きっと発見できるに違いない。
 クルマのあまり通らない道が良い。実際に自転車に乗って休日に一度探索してみる。そして実際に通勤に移してみる。
 最初のうちは迷うこともあるかも知れないけれど、慣れてくると、いつの間にか身体が自然に細い曲がり角を、曲がっていくようになる。

 転車は、まあママチャリでも悪くはないが、出来れば新たに買うと、心持ちも変わってくると思う。
 新たに買う場合ならば、ディレイラーが付いていることは絶対条件だ。東京都内でも一〇キロも移動すると必ず坂道は出現するから。出来れば前三段、後ろ六段くらいが欲しい。最近のちょっとした自転車はそれくらいのギア数は当たり前だから、選ぶのに苦心することはないだろう。
 現在のスポーツ系のバイシクルは大きく分けて、ロードレーサーとマウンテンバイクの二種類。
 ロードレーサーは本当に綺麗な道路でないと、チューブラーのタイヤがすぐにパンクしてしまう。チューブラーはパンク修理が利かないから、予備のタイヤを常に持っていないといけないことになる。
 通勤に使う場合、どうしてもガタガタの歩道などにも登らなくてはならないから、あまり現実的でない。軽くて早いのは非常に魅力的だが、維持するのがそのうち厭になってくるのではないかと思う。
 対して、マウンテンバイクは、ロードレーサーに較べて遙かに現実的である。凹凸のついた太いタイヤは、何でも乗り越えられるし、空気圧に常に気を配っていれば、パンクなども滅多に(殆ど)ない。ただ、長く乗っていると乗り心地に疲れてくるし、もとよりスピードがあまり出ない。まんざら悪いことでも無かろうけれど。
 ただ、私が残念に思うのは、両者に共通して、泥除けが付いているモデルが少ないことだ。
 泥除けは、この二つのタイプに付けると、非常にダサく見えてしまうのが難で、店頭で見かける最近の自転車には、ママチャリ以外は、付いていることが非常に少ない。
 ところがこの泥除けは通勤に使うためには必須なのだ。
 自転車通勤を続けていると必ず雨に出会う。または雨上がりに出会う。路上が濡れている時、泥除けがないと、尻と背中がぐしょ濡れになる。これはどんな雨具を着ていても防げない。
 もとより自転車通勤はファッション性より実用性なのであって、泥除けは必需品だ。
 私が薦めるのはロードレーサーとマウンテンバイクの中間である「クロスバイク」というヤツだ。タイヤの太さが両者のほぼ真ん中くらいで、泥除けが付いているタイプも多い。このカテゴリーの自転車は、泥除けが付いていてもダサく見えないのが良いところだ。
 どんな服で乗っても気恥ずかしくないデザインだし、ランドナーもしくはスポルティフと呼ばれていた頃の(私が乗っているような)自転車の正常進化形だろうと思う。
 ドロップハンドルであればなおのこと良い。
 ドロップハンドルは、慣れない人には危なっかしく感じるものだが、あのハンドルは競輪の選手のように下の部分を握ることだけを目的としたものではない。走り方によって最低三種類の握り方が出来るので、長時間、自転車に乗る場合、疲れが少ないのだ。
 値段は一〇万円も用意すれば、相当に立派なものが買える。必要にして十分である。一〇万円近くの買い物をすれば、それを生かそうという気にもなるもので、自転車通勤は続くことになるのではないかとも思う。つまり三日坊主防止にもなるというわけだ。
 まあ、そうは言っても、スーパーで二万四八〇〇円のものを買っても良いのだけれど。
 職場までの距離が七,八キロ以上になるのであれば、一〇万円程度のもの。それ以下ならばスーパーで買う。そんなところだろうか。

 転車以外に必要なものは、まずポンチョ。先に書いたように、雨天に自転車に乗るための雨具としては、まあベターなところだと思う。
 それから空気ポンプ(フレームにくくりつける小型のタイプ)とパンク修理セットも必要だ。私も鞄に必ず入れている。慣れるとパンク修理など一五分もあれば出来るようになる。修理セットも小さいケースに入ったものが、五〇〇円くらい。一〇回くらい使える。パンクしたくらいでタクシーに乗るのでは、せっかくの経済性が損なわれる。
 さらにヘルメット。
 これは被った方がよい。スポーツ自転車の専門店などに行くと、流線型の派手派手のヘルメットが一万円前後で売られている。レーサーたちが被るタイプだ。太股までの例のモッコリパンツとともに着用すれば、それなりに見えるのだけれど、通常の街乗りの格好では、被るのが少々気恥ずかしい。
 それに頭に当たる部分が発泡スチロールで出来ていて、値段の割には安っぽい。多分、あまり数が出ない故に、値段設定を安くできないのだろう。
 それに較べると、オートバイのヘルメットの方が充実していて、ものによっては値段も安い。安全性の点から言えば、フルフェイスがベストに決まっているが、あれを被って自転車に乗るのは、見た目にあまりに馬鹿げているので、お椀型のもので良いと思う。
 頬に受ける微風というのも、自転車の大きな魅力の一つなのだから、なるだけ顔は露出したままでいたいという理由もある。
 安全用具なのだから、ケチるのもなんだと思うけれど、結局ディスカウントスーパーなどに売っている、スクーター用の四〇〇〇円くらいのもので十分だと思っている。そもそも自転車はオートバイの半分以下のスピードしか出ないのだから。
 安全用具といえば、バックミラーは必需品だ。
 本来は、スクーターに付いているようなアームの出っ張っているヤツの方が良い。視認性が格段によろしい。でも、格好悪いし、自転車をどこかに立てかけるときに邪魔になる。
 そのあたりが気になる向きには、小さなミラーも用意されていて、ドロップハンドルのバーエンドにちょこんと付けるタイプがある。視認性は多少落ちるが、無いよりはあった方がよいに決まっている。
 実は私もこのタイプ。
 スピードメーターはあった方が面白いかなという程度。 
 平均速度などは気にする必要はないが(気にしてはいけない。危険)、積算距離が積み重なっていくのはなかなか楽しい。私は三〇〇〇キロに達した。東京からならば、九州を通り越して、沖縄に向かう洋上にいるというわけだ。
 自転車用具とは少し違うけれど、お奨めなのは、サドルの交換だ。
 この手の自転車に乗り出すと、一〇〇人中一〇〇人が言い出すのが「尻が痛い」という台詞だ。
 慣れないうちは、足でも股でも腕でもなく、痛いのは尻。この手の自転車のサドルは、堅いのだ。やがて慣れてくるのではあるが、最初のうちは尻の痛みは自転車の楽しみを大いに殺ぐ。自転車に乗ること自体が厭になってくる。それでは元も子もないので、サドルを交換してみよう。
 ママチャリタイプのサドルで、黒いヤツに替えてみると良い。黒ければ、見た目もそんなに損ねない。一五〇〇円くらいで買える。取り付けも実に簡単。レンチ一本しか必要ない。スプリングとクッションが効いて、尻の痛みが確実に軽減する。
 慣れてきたら、もとのサドルに戻すと良い。堅くて細いサドルの方が絶対に力は入る。スピードも距離も伸びる。だが、最初のうちは快適な方が優先だ。
 自転車用の潤滑オイルは買っておくと良い。一ヶ月に一回くらい、自転車を磨くときに差してやる。いつまでも快適に乗れる筈だ。よく中学生のガキどもが、キイキイ言わせながら、自転車に乗っている姿を見るが、何故あれが気にならないのだろう。物を大切にしないガキだ、と思うと同時に、あの種の雑音が気にならないのは精神のどこかがおかしいのではないかと思ってしまう。自転車用のオイル、三〇〇円くらい。
 特殊な工具などは必要ない。プラスとマイナスのドライバーが各種と六角レンチ、モンキーレンチのたぐいがあれば充分だ。
 それ以外にもチェーン切りやニップル回し、インナーワイヤープラーなど、あれば良いことは良いけれど、三年に一度も使いやしない。必要になったら、自転車を買った自転車屋さんで借りればいいのだ。
 ライト。最近の自転車には最初からついていないものが多く、これは是非もので必要。
 二つのタイプがあって、電池式のものとダイナモ式(自己発電タイプ)のもの。
 電池式のものは単三型のものを二〜四本使うものが多い。ニッカド電池を用いて、毎日充電していれば出費も大したことはなく、最近の流行は、断然、こっちのタイプだ。
 私はダイナモ式を使用している。環境などのことをを考えて、とかいうわけではなく、自転車本体が古いから、最初から、ダイナモ式が付属していたと言うだけのことだ。
 夜になると、ペダルが多少、重くなる。スピードが出ていないと暗い。あまり良いことはない。でも新しく買い換える必要まではないから、相変わらずそのままだ。
 手袋は冬になると必要になってくる。人によっては耳当ても欲しくなるかも知れない。人それぞれ。お好きなように、である。特に手袋は「自転車用」など全く必要ではない。指の部分が切れていて、寒いだけだ。

 あ、自転車通勤。
 だが本当は一番ネックになるのは服装の問題ではなかろうか。簡単に言えば、背広、ネクタイはどうするのだということだ。ホワイトカラーはこの辺、少々辛い。
 真冬ならまだしも、春夏秋のスリーシーズンは一〇キロも走れば汗だくになること請け合いだ。何より皺になる。
 背広のまま通勤するのは、正直言って無理だ。
 私は職業柄、服装の問題をクリアしているのは幸運だったのだけれど、大きな問題ではあると思う。私に言えることは、このことに関してはあまり無い。
 スーツは会社のロッカーに置くか(芸能プロの桂社長タイプ)、背中のデイパックに入れるしか無いのだろう。いずれにせよ、着替えなくてはならない。
 でも、着替えも考え方によっては悪くない。女子銀行員なども皆そうしているし、テレビの「ショムニ」のお歴々だって、そうしていたのだ。
 何かアイディアがあれば教えて下さい。

 さて、自転車通勤。条件が整えばスタートだ。
 私は人生がちょっぴり楽しくなった。
 多分、多くの都市生活者にとってもそうなると確信している。
 一人でも多くの人が自転車に乗って、そして、やがてこの東京という街に自転車専用レーンが出来、渋滞が減り、排気ガスの排出量が減り、この街から富士山が見える日が増えれば良いな、と思っている。


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