長沼さんって誰?


 て、「婦人公論」の対談でご一緒した、オリジナル自転車製作の奇才、長沼義雄氏が私に対してこう言うのだ。

「ヒキタさん、対談の時に見ましたところ、ヒキタさんの自転車、フレームが古すぎる。重いでしょ。だけど、きっと良くなる。私のフレーム使えば、きっと羽根が生えたようになる。オリヂナルのアルミフレームね。固くて丈夫、しかも軽い。替えてあげる。しかもタダ。無料。来なさい来なさい、今すぐに。足立区の私の店」

 長沼さんは自転車製作歴40年の大ベテラン自転車作家。自分の理想型の自転車から大きく離れたものを見ると、改造したくてたまらなくなっちゃう人なのだ。彼が目を付けたのは私の自転車であった。一緒に自転車対談なんかしながら、ヒキタの自転車はいかん。見逃しがたい。ワシの理想の自転車に近づけてやるっ。

 でも、コレは行きますよね。私ならずとも。

 長沼さんはこういうのをほいほい作ってしまう人なんですよ。これはお年寄り向けの4輪自転車。完全オリジナル。乗ってみると普通の自転車と全然違う、ヘンな乗り味。面白い。お年寄りなんかが町中をゆるゆると行くには最高ですね。

 で、私は行きましたがな。いそいそと。そぼ降る小雨の土曜日。江東区から足立区までね。そして、私の自転車は元の形が全く分からないほどに変貌を遂げていったのだ。