て、センチュリーライド2003の裏話その2だ。今回は本当にコレには世話になった。何がといって、100マイル以上のライド中、私は何と言っても「ケツがいたくなる」ということだけは絶対に回避したいと思ったのだ。そこでとった手段がコレ。


東京サンエスの女性用サドル

 果的に、これは成功したのか、しなかったのか。実はよく分からないところもある。やはりこのサドルはあくまで女性用であったからだ。私は男だし。

 ゴールまでのおよそ180km近く、私のケツは何ともなかった。ちっとも痛くない。痛いのはむしろフラットバーの弊害で、姿勢の固まった背骨や、握りの変わらない手のひらだった。尻は何ともない。その理由はやはり、このサドルの幅の広さと、適度な柔らかさだと思う。こういうサドルだと、ライド中に前後に尻のポジションを微妙に変化させることができて、同じ臀部の中でも、前、後ろ、に交互に体重をかけることができる。おまけに例のスリット入りだから尿道への圧迫も抑えられていて、尻の痛みという意味では、かなり快適なライドだったと言える。
 ではどこが問題だったか。
 これは私だけの勝手な事情(どんな?)なのかもしれないけれど、サドル前部、つまりモノが収まっている部分の下着パンツが、暫く漕いでると段々とずり上がってくるのよ。これが布地が擦れてちょっと痛い。だからして、私は休憩の度にパンツを履き直さねばならなかった。これは女性では起こり得なかったことなのだろう。モノの有無がこの現象を作ったのだと思う。
 そして、もう一つはスリット部分の位置がやはり微妙に違うということだ。

 実はこのサドルは、私のカミさんがモニターする筈だった。
 ところが、サドルを提供されたとたんに妊娠が発覚し、彼女は自転車に乗れなくなってしまったのだ。そのため、時を越え、私が今ここで試す、ということになってしまった。
 東京サンエスさんとしては「男が乗ってどうするー!」というところだろうとは思うが、事情がそうなのだ。誠にすまんとしか言いようがない。すまぬすまぬ。

 ただ、男の私にも、乗った印象を語ることが許されるのならば、こいつは恐らくよくできたサドルなのだ。
 スポーツサドルのソリッド感を失わずに、きちんと柔らかい。それもブワンブワンとしたママチャリ風の柔らかさではなく、振動と重みをしっかり受けとめる、という手合いの柔らかさだ。
 見た目も結構しゃれてるし、幅の広さは体重の分散に繋がり、女性にはかなり有効だろうと思われる。

 女性の初心者で「うっひょー、サドル硬ぁーい、尻痛ぁーい」と思っている人には、このサドルはかなりの福音となると思う。是非お試しあれ。
 一応、東京サンエスのHPをリンクしておくことにするんで、こちらにどうぞ。製品名は「Grunge-fem」だ。


 は、後日談がある。
 ホノルルから帰ってきてしばらくの間、私はこのサドルそのままで乗っていたのだ。理由はもちろん「サドルの交換作業が面倒くさくて」だ。んで、ある日曜日に「さすがに女性用だからな、元のサドルの方が軽いし、元に戻すべ」と、交換してみた。
 すると、い、痛いのだ、ケツが。すごく痛い。
 私は驚いた。原因は当たり前ながら二つ。私のケツがこの女性用サドルに完全に馴染んでしまっていたことが一つで、もう一つが、やはり従来サドルとこのサドルの圧倒的な柔らかさの差だろう。
 つまり、このサドルは、スポーツ的な乗り心地を保ちつつ、実はすごくふんわりのサドルだったのだ。
 それをあらためて思い知ってしまった。
 このあまりの落差。私はますますオススメだと思ったよ。特に初心者女性。是非どうぞ。(2003/11/11)